ひみつのコウカン♡ダイアリー

強くて可愛い男の子

あの時少年忍者クリエで何が起こっていたのか

それはあとで思えば最初で最後の時間となった。思い出す度に不思議な感傷に囚われてしまう。

ジャニーズ銀座"少年忍者"単独公演。

少年忍者とは何か。不本意ながら俗に染まった言葉で表現するのならば、キンプリ、美少年、HiHiJetsなどあらゆるユニットのバックで踊る事が多い、後ろの方で踊ってる小さい子達の集団25人が少年忍者である。

去年14人からスタートした少年(ちびっこ)忍者は瀧くんと星輝くんと2018年の夏のサマステで18年組10人を加え26人となった。
冬の帝劇キンプリアイランドでは5忍者として(渉/皇輝/北川/内村/元木)が選抜され、「5忍者」「少年忍者」という括りに細分化されカテゴライズされた。

当時少年忍者担は(さて私の担当は今少年忍者にいるのでしょうか?????)クイズを何回も頭の中で自問自答し、思考回路停止に陥りアタマがおかしくなったりした。

ここら辺からもはや少年忍者はユニットというより概念化しており、「こどもはだいたいしょうねんにんじゃ!!(偏差値2)」って言う感じだった。

少年忍者は果てがなく明日何が起きるかわからないのだけど内の中には安らぎや優しさやかわいさが同居しておりムーミン谷のような集落だった。そしてラウールはキンプリアイランド後にSnowmanへの加入が決まり、これを最後に実質少年忍者を脱退。ムーミン谷を去りこの春今の25人の編成となった。



ムーミン谷2019



織山尚大くん(15歳)は本当に不思議な存在だった。



去年の夏、私はある病を発症してしまい、ツイッターでつぶやく事も元気に現場に行く事も食べる事も何もかもが以前と同じようには出来なくなってしまっていた。

なんとかたどり着いたサマステの指定席のすみっこで虚空を眺めていた夏のはじまり、指定席のすみっこからでもわかるくらいいつも通り織山くんが織山くんをしているのが嫌でも目に入ってきた。

私は

(もしかして君?ガンギマッてんな????)

と今日は織山くんだけを見てみようって自分なりの冒険に出た。

生まれて初めてサマステで1公演織山くんだけを見た私は、シンデレラガールの終わりのジャーンみたいな所で後ろの端っこで"世界イチかっこいいダンスする俺"の余韻に浸りながらしばらくずっとキメポーズしてる織山くんを"余韻いいからもう捌けろやぁ"みたいに他の忍者が織山くんの背中を押してるのを見てうわ?少年忍者最高か????これは?推すしか???だったし、ずっと爆笑していた(笑ってはいけないコズメロ)

公演終わりにあれ?こんなに笑ったのいつぶりだろうってなり、公演が終わる頃に私は

(なおヤバイなおヤバイ)

しか言語を発さなくなった壊れたペッパーくんになっていた。

私は黙った。そして思った。

もういいや、面白くてわくわくすれば何でも。

大げさではなくあの夏私を少し救ってくれたのは織山くんだった。

そしていつのまにか私にとって彼は特別な少年になった。


5/8初日
シアタークリエの閑散としたロビーにはグッズの販売はなく活気を失っていた。25人をグッズという形として残してもらえないのはどう考えても切なかったけれど、幕が開くと
"グッズ???ないの??ふうん...なんだっけ??それ??"と忍者グッズハブられ男を忘れるくらいの最高の瞬間で溢れていた。


織山くんが12列のセンターお立ち台に疾風のように現れ口火を切りダンスソロから少年忍者単独公演は始まった。

1曲目はTokyo experienceでスタートし、25人のダンス&メンバー紹介の後はそのままの勢いからのBeat line、そしてIn your life、Beat lineの一糸乱れない隊列からのダンスはプロなんだなと当たり前の事を当たり前のように感じさせてくれ、その流れからのIn your lifeでは体育座りをしなから歌う姿は少年にしかできないジャニーズJr.感を醸し出しながら「"大人になったその時わすれないこの思い"」と歌う彼らが踊るクリエのステージはピーターパンのネバーランド同然だった。

ティンカーベル役(なお)


もうすでにここらへんの流れだけでも(あっこれはもうセトリ最高では???)というか感じで客席でセトリ最高音頭(すげぇ振付ダサそう)を踊り出しそうだったのだが、恐ろしいのがセトリ最高音頭、この後も終わる事なく、飽きる事なく5日間永遠に続いた。

そしてここから織山くんのソロダンスパートへと続く。

THEジャニーズのキラキラの衣装を脱ぎ、鎧を剥ぐようにステージ衣装というにはあまりにも装飾が少なすぎるカジュアルなゆるめの白のロングTシャツを纏うと、織山尚大くんはなぜか途端に別人のように垢抜けて美しくなった。

幼虫から脱皮しさなぎになり蝶となって美しく宙を舞っていた。

その姿はダンサーとアイドルの狭間を行き来する葛藤が儚く今にも消えてしまいそうであった。苦しそうな表情を浮かべながらステージ場でパタリと倒れ動かなくなったかと思えば、発狂したかのように震え出し、また不死鳥のように生き返る。まるで短編の舞台を見ているかのような起承転結が数分のソロダンスの中に織山くんの生き様が表現されていた。その姿はお世辞にもジャニーズの王道アイドルとしてキラキラしているというものではなく、ジャニーズのどの現場でも見た事がない、感じた事のない不思議な高揚感であった。その姿は織山くんを熱い目で見るジャニオタ達の目線によってのみどこかギリギリの所でジャニーズを肯定していた。


この後続くYa-Ya-yahメドレーからの勇気100%、CDCG、明日に向かっての流れは秀逸だった。
ジャニーズJr.をジャニーズJr.とジャニーズJr.でサンドイッチしてジャニーズJr.も添えて、デザートにジャニーズJr.も付いてきます。食後の飲み物はアイスのジャニーズJr.とホットのジャニーズJr.がございますがどちらがよろしいでしょうか?お土産にジャニーズJr.も入れておきますね!
みたいなジャニーズJr.のオーバードーズで一生分のジャニーズJr.を浴びながらジャニーズJr.致死量をとっくに超えていた。ユニット乱立前のガムシャラJ'sPatryくらいで絶滅したと思っていたジャニーズJr.最後の生き残り=理想郷は少年忍者だったのかもしれない。


5/12
ラストの公演だった。
なにかこれは、少しおかしい、と気づいたのは後半になってからだった。
深田竜生くんが溢れ出る涙を我慢できず踊っていた。それを見た織山くんは彼の顔を覗き込みながらポンッと肩を叩いた。
ダブルアンコールで内村くんも泣いており、
悠杏くん長瀬くん悠仁くんも泣いていた。

その時、(エーン泣くくらいいい公演だったんだねエモ)と思っていた私は本当に実に呑気だった。あれほどジャニーズJr.を浴びたのにも関わらず彼らが明日を約束されないジャニーズJr.である事を本当は忘れていたんだと思う。

安嶋さんが人目を憚らず目を真っ赤にして泣いているのを見て、いや?なんかこれはおかしいなと思った。空輝さんと同期の黒田くんが空輝さんに駆け寄った。青木くんも空輝さんに微笑みかける。まもなく織山くんの顔が一瞬歪んだかと思うと腕で目を隠しながら泣きだした。こちらが動揺していると空輝さん、安嶋さん、織山くんで肩を組み3人でギューとなりサマステ2018の青組が大好きだった私はいよいよ涙腺が緩んだ。
"みんななんで泣いているの?大丈夫?"と飼い主の回りをなす術なく不思議そうにぐるぐるする将聖君海琉くんたちは飼い主を心配する忠犬のようで心が痛んだ。

そうこうしている間にHiHiJetsの5人が明日からクリエやりまーす!というお知らせで登場し、おっおん?という形でダブルアンコール終了で幕が閉じた。

(いやいや自担の泣き顔Jetsで終われるわけなかろうが?????)
あの時シアタークリエの少年忍者担の心がひとつになった瞬間だった。

止まらない忍者コールのボルテージは最高潮に達した。

そして再び幕が開き、皇輝くん、内村くんが挨拶した後、皇輝くんが
「他になんか喋りたい人いる〜??」とここはホームルームか??と笑いそうになったが織山!織山と無理やり前に出された織山くんは

「いろんなファンの方がいて...僕たち全員の事を応援してくれて、いろんなアドリブとかほんと千秋楽まで何があるかわからないコンサートだったんでほんとに楽しかったです。」

と変に高揚せず感情的にならず淡々と今の気持ちのみを喋る織山くんらしい言葉だった。


「これからもずっと僕たち25人についてきてください!」と言えない、ファンとして約束してもらえない現実があるからこそ絶対に絶対にこの光景を目に焼きつけなければならなかった。


皇輝くんの掛け声でステージ上ぎゅうぎゅうになりながら横1列になり"俺たちが〜少年忍者〜!"と手を振り上げ、最初で最後の25人の短い春は幕を閉じた。




幕が閉じた後も鳴り止まない拍手は今までどのコンサート会場で降り注いだ銀テープより美しかった。


月島紗南